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かがた屋酒店の常連客で、
『今週の晩酌』を連載中の水取 日土志(みずとりひとし)が、
新企画を持ち込んできた。

『渡辺篤史の建もの探訪』(テレビ朝日)でおなじみ
俳優・渡辺篤史に憧れを抱いていたことから
勝手に蔵元訪問を始めた模様です。

さて、今回はどこに向かったのでしょうか……

水取日土志の蔵もの探訪 vol.03

澤屋まつもと 守破離/松本酒造(京都府)

時代の寵児・松本日出彦杜氏と
守破離のおりがらみ&試験熟成



鳴くよウグイス平安っ京!


西暦794年(延暦13年)、
奈良の「平城京」から現在の京都市に
都を引っ越しました。

ややっ、桓武天皇申し訳ない。
その前に10年間だけ、
「平安京」から南西10km程の場所に
「長岡京」を置いていましたね。

そこで祟りや内紛なんかがあって仕方なく
「平安京」に移ったそうですが……

それから1000有余年あって、
1869年(明治2年)に、
政府が京都から東京に移されました。
これを「東京奠都(とうきょうてんと)」と言います。

「遷都」ではなく「奠都」なんですね〜。
どうしてそういう言い方をするかというと
まだ京都も都だよ! と言っている。

なにせ京都御所がまだ残っていますし、
都が移ったのではなく、東西両京!
京都と同じく東京も都になったんだよと、ね。
但し、中央行政機関など首都機能は東京に移ったため、
首都は東京ということになります。

また、これに先んじては天皇が東京に行幸し、
江戸城(東京城)が皇居と定められてもいます。
(※行幸とは天皇がお出掛けすること)

そうは言ってもですね、
平安京に遷都されてから1000年以上、
京都は日本の首都であり続けたわけです。
ミレニアム・シティですよ。
観光客が世界中から押し寄せるわけですな。

前置きが長くなりましたが、
今日は誰もが知る古都・京都の酒蔵、
松本酒造さんに
お邪魔します。



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松本酒造さんは
京都・伏見の高瀬川沿いに佇む
1791年(寛政3年)創業の老舗蔵です。

あ〜〜〜伏見ですよ〜〜。
「鳥羽・伏見の戦い」の、ね。
『戊辰戦争』の口火を切った戦いだ。

1868年(明治元年/慶応4年)1月27日、
薩摩藩と長州藩を中心とする新政府軍と、
15代将軍徳川慶喜を擁する旧幕府軍の戦いが
京都の鳥羽とその直後、ここ伏見で始まります。

新政府軍側には、せごどんや坂本龍馬がいるし、
伏見の戦いにはあの新選組も参戦しているんだ。
スーパースター勢揃い。
歴女の皆さん、いかがですか?
まさに日本そのものが変わる瞬間だよね。
(新選組はもちろん旧体制側です)



御香宮神社
(ごこうのみやじんじゃ)

新政府軍はこの御香宮神社を中心として展開、
旧伏見奉行所を本陣とする旧政府軍と
やり合うんだね。

はぁ〜〜〜、
それにしても立派な神社ですね〜。

それもそのはず、
平安時代まで遡る由緒正しき神社なんだとか。

862年(貞観4年)9月9日、
境内より良い香りの水が湧き出し、
その瑞兆を寿ぎ、時の清和天皇より
「御香宮」の名を賜ったと。

そしてその麗しき湧き水は「御香水」と呼ばれ
現在は名水百選にも選定されているほど。
なんと徳川家の将軍たちの
産湯としても使われたそうですから。

ははぁ〜〜〜、
水がいいんですね!

なるほど、わかりました。




ああ〜〜〜
これが御香水ですか
早速、いただきます。

ん〜〜ん、とっっっても美味しい!
柔らかいね〜〜タッチが。
ソフトで優しい!

そういえばですよ。
灘の酒は辛口でキレ良く「男酒」と呼ばれたわけですが、
対する伏見は「女酒」。
滑らかでキメが細かいと昔から称えられてきたのは
この素晴らしい水が大きく寄与していた
ということでしょう。

それにしても、
今でも枯れずに湧いてるって、
何にも代えがたい財産ですね。
水場も綺麗に管理されています。
皆さん、地元を愛してるんですね。
嬉しくなっちゃいます。



水でつながる文化とくらし
酒と歴史が薫るまち

「御香水」に限らず、ここ伏見はかつて
「伏水」とも書かれていたほど
良質で豊富な地下水に恵まれた土地柄です。

その証拠に「伏見の七つ井」という
七つの名水があって、
先程の御香水も「石井の御香水」と呼ばれ、
七名水の一角なんだそうです。
地域にほかに六つも名水がある?!

水が豊か。
人生も豊か。

美味しいお酒が生まれる地域には
必ず良質な水が豊富にある。
いや、勉強になりました。


ちょっと寄り道が長くなっちゃいましたか。
さあ、では、いよいよ
松本酒造さんに伺いましょう。
お邪魔します。




はは〜〜〜〜〜。
こちらが社屋ですか。
前回(蔵もの探訪vol.2)伺った
中村酒造場さんと同じく赤レンガ造りで
とっても素敵。
また雪がいいね〜〜。
絵画みたいだ、ね。

それもそのはず、
本社酒造場は経済産業省から
近代化産業遺産の認定を受けているそうで
建てられたのは1922年(大正11年)、
あ、本物だ。




まず、どうぞご覧ください。
もうハリーポッターの世界に迷い込んだようなね、
ファンタビでもいいんですが、
そんな雰囲気がありますでしょう?
八角形レンガ煙突の造形美には
絶句します。

1791年(寛政3年)創業と聞いていましたが、
そこは京都の東山。
この建物は1922年(大正11年)築。
こちらは伏見の名水を求めて
増設した建ものだったんですね。

つまり、「鳥羽・伏見の戦い」のあった
1868年(明治元年/慶応4年)には
まだ社屋がなかったということになります。

ほほぉ〜〜〜、なるほど。
その時たっくさん建ものが燃えていますからね。
戦火を逃れられたんだ。
いや、良かった、本当に……。

それでは、そんな歴史的建造物に
失礼します。




椅子に座っていらっしゃるのは
松本日出彦(まつもとひでひこ)杜氏。
こちらはお酒の分析などを行う部屋です。

なんだか理科室にありそうな器具が
そこかしこに並んでいます。
どう使うんでしょう?!
さっぱり分かりません。

そうか、お酒造りって理科でもあるんだ!
ねえ、びっくりですよねえ。

ああ〜〜〜〜、
そんな中でも、縦横に走った梁(はり)が
ほんっとうに素敵!

天井の一部が吹き抜けになっていて
広く感じるし、採光も抜群の造り。
格子状の壁をご覧ください。
お洒落ですよね〜〜。カフェ、ねぇ。
実験室っぽく見えないもの。




長い廊下がまた絵になるんです。
撮影スタジオとして貸し出したら
いいんじゃないかしら。って
思ってしまいますよ?!
素人考えですが……。

それと、こちらは
『澤屋まつもと 守破離(シュハリ)』の
山田錦ですが、
よくご覧になってください。
何を見ていただきたいかと申しますと
実はほら、「特定名称酒」の表記がない……
ないんですね!

以前からお馴染みの方には
山田錦の50%磨き「純米大吟醸」と
認識されることと思います。
中身はおそらくそうでしょう。
しかし「純米大吟醸」の表記がない。
だから、精米歩合の表記もない。




「特定名称」というのは、
商品の価値を守るためにあります。
「純米」と「純米大吟醸」では、
造る上で掛かるコストが大きく違います。

そのコストは商品の値段に
含まれるわけですから、
当然「純米大吟醸」のほうが高いよね、
当たり前だよね、となります。

はは〜〜〜〜。
『澤屋まつもと』はそうした価値の担保を
捨ててしまうわけですか。
参りました。
杜氏・松本日出彦さんが
“変態”“クレイジー”と言われる由縁が
分かりました。




それから、もう一つ。
生産者への愛が凄いんですね。

生産者とは農家さんのことですよ。
日出彦さんも日本酒の生産者でありながら、
こう言うんですね。

“日本酒の本当の価値は
米の産地にある” ってね。

こうした日出彦さんの考え方が
最も反映された日本酒があります。
それは、
『澤屋まつもと 守破離 ID』ですよね。
(現在は完売しています)

普通は収穫されるお米は全部一緒にしちゃうんですが、
こちらはちゃんと田んぼ別にしておいて
田んぼ毎に醸して瓶詰め。
「ID」って田んぼの番地のことなんですね。

ほほぉ〜〜〜〜〜〜〜、
そんなお酒があるんだ!
そう思いますよね。



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でも、どうして
こんな大変なことをするのかっていうと
お店で日本酒を選ぶときに、
「どこでどのように育った米で醸した日本酒なのか」
そういった視点が育まれていって欲しいという
日出彦さんの願いが込められているんです。

ワインも嗜むワタクシですが、
向こうのね、海外のシェフなんかは
そのワインがどんな「造り」かの前に、
どんな畑のどんな土でどんなブドウを育てているのか
そこが一番知りたいらしいよね。

逆に言えばそこにしか興味がないとも言えるんだね。
それこそが
「アイデンティティ= ID」
なんだね。



↑↑↑『守破離 ID』は完売しています↑↑↑


そうして、
日出彦さんはお酒ができ上がると
真っ先にお米農家さんのところへ
一軒一軒訪問し手渡すんだそうですよ。
とっても素敵。

でも、単純な話で終わらないんです。
もちろん感謝の気持ちが一番なんだけれど、
カタチになったものを見てもらうことで
農家さんがどれだけ大切で偉大な存在かを
知ってもらいたいという思いが込められているの。

その背後には、
「特A地区」という酒米の
最高の生産地であっても、
生産者の高齢化や後継者不足という
ジレンマがあるから。
なんですね。



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はは〜〜〜なるほど。

少しでも生産者に寄与できたら……
という日出彦さんの強い思い……
こんなこだわりが時にクレイジーと
映ってしまうだね、きっとね……。
でも、本当に
素晴らしいね。


いかがでしたでしょうか。
これからも松本酒造は、
松本日出彦杜氏を筆頭として
生産地・生産者とともに
新しい日本酒の世界を
切り拓いていかれることでしょう。

期待します。






松本酒造の松本日出彦さん、蔵人の皆さん、
今日はどうもありがとうございます。


お邪魔しました。また伺います。


日土志が訪問した蔵元のお酒 その1

試験熟成/60本限定/澤屋まつもと 守破離 2014 山田錦 1800ml

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日土志が訪問した蔵元のお酒 その2

60本限定/新酒/澤屋まつもと 守破離 山田錦 うすにごり生 1800ml

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プロフィール

水取 日土志
(みずとり ひとし)


38歳(男性・独身)。西小山在住。
近所のかがた屋酒店でお酒を買って晩酌するのが一番の楽しみ。
出世するつもりは毛頭なく、職場でもお酒のことばかり考えている。
最近、ウンチクが過ぎて部下にウザがられていることを自覚したのか、
酒屋で仕入れた情報は、もっぱら猫か、かがた屋の新人にだけ話している。
西洋かぶれの一面もある。外見からは想像できないくらいチャーミング。

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